自己肯定感って何?自己肯定感を高めるにはどうしたら良い?
最近、「自己肯定感」という言葉を目にすることが多くなりました。やたらと自己肯定感を高める必要性を説くような言説もみられるように思います。しかし「そもそも自己肯定感って何?」「自己肯定感って高くないといけないの?」「自己肯定感を高めるにはどうしたら良いの?」などなど、疑問を持っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。このコラムではそんな「自己肯定感」について詳しく解説していきます。
目次
自己肯定感とは?
「自己肯定感(じここうていかん)」とは、自分自身の在り方を肯定することができる気持ちを指す言葉で、「自分を大切だと思える」「自分には価値があると思える」ような感覚のことです。また、自己肯定感は自分自身に対する肯定的な評価になりますので、他人からの客観的な評価とは違ってとても抽象的で捉えにくい感覚でもあります。
加えて、自分で自分を評価するということは、家庭環境や友人関係、学校や職場での人間関係など様々な他人との関わり合いの中で実感として自分の内に形作られていくため、他人との関わり合いの経験によって相対的に得られる自分自身に対する肯定的な評価であるとも言えるでしょう。
自己肯定感が低くてもそれはあなたのせいではありません
自己肯定感が得られない、あるいは自己肯定感が低いからといって自分を責める必要は全くありません。なぜなら自己肯定感が得にくいのは今の日本の社会では当然の帰結だからです。どういうことか、具体的に説明していきましょう。
まず、「自己」とは自分自身のことを指す言葉ですが、自己の反対は「他人(他者)」ということになります。したがって自己とは言い換えれば「他人ではない個人としての自分自身」であると言えます。
日本の社会ではみんなと同じであることが良しとされます。「出る悔いは打たれる」といったことわざに代表されるように、他人と違ったことをすることをネガティブに捉えるのは昔から続いている社会的な風潮だともいえます。自己とは「他人ではない個人としての自分自身」であるのであれば、みんなと同じように振舞うことによって自分が肯定されたとしても、肯定されているのは「自分と他人を含めたみんな」であって、「個人としての自分自身」であるとはいえないのではないでしょうか。他人とは違う存在が自己なのですから、他人と同じように振舞うことによって自己肯定感を得ることは難しいのです。
もしあなたが今までの人生で他人と違ったことをすることに対して消極的であったのであれば、いま現在のあなたが自己肯定感が低いと感じていたとしてもそれはあなたの責任ではありません。それは日本の社会が求める「良い子」であろうとしてきた結果でもありますので、自己肯定感が低いことを否定的に考える必要もないのです。
人は誰でもその存在に価値がある
自己肯定感は他人との関わり合いの中で形作られるため社会的な性格を持っているといえます。しかしここでは社会的な側面から少し視点を変えて、別の角度から考えてみたいと思います。
人間は一人ひとりその個性に違いがあり、これを生物学では固体差といいます。人間を含むあらゆる生物には同様に固体差があり、これを生物的多様性と呼びます。そして生物学的にはこの多様性こそに価値があると考えられています。
人間を例にとってみますと、暑さに強い人や寒さに強い人など、暑さ寒さに対する耐性ひとつとっても様々なタイプの人がいるかと思います。仮に人類の全ての人が寒さに弱いタイプの人だった場合を考えてみましょう。その場合もし気候変動などによって世界中が強烈な寒波に見舞われたりすれば、寒さによって体調を崩す人が続出し人類全体が受けるダメージは甚大なものになってしまうでしょう。しかし実際には固体差があることによって寒さに強い人も一定数いるからこそ、強烈な寒波などに襲われたとしても人類全体にとって致命的なダメージになることは避けられるのです。これが生物学的に多様性には価値があると考えられている理由です。寒さに対する耐性に限らずとも人類にとって今後どのような危機が訪れるかは誰にも予測することはできませんので、どのような個体差であってもそれは危機への備えという意味で価値があることなのです。したがって、人間は一人ひとりその個性に違いがあり固体差があるのですから人は誰でもその存在に価値があるといえます。
自己肯定感を高めるためにはどうしたら良いの?
先ほどの項では生物学的な観点から人は誰でもその存在に価値があるということをお話いたしましたが、そうは言っても実感として自己肯定感を得るのはまだまだ難しいのではないかと思います。それでは、自己肯定感を高めるためにはどうしたら良いのでしょうか?ここでは3つのポイントに分けて具体的に説明していきたいと思います。
1.ありのままの自分を受け入れる
人は誰にでも「得意なことや苦手なこと」「出来ることと出来ないこと」「向き不向き」があります。それは単に個性の違いによるものですので、固体差(人間の場合は個人差とも言います)ということになります。先ほどの項で説明したように、どのような個人差であってもそれは価値があるのですから、苦手なことや出来ないことがあったとしても、そのことを否定的に考える必要はないのです。
あのアインシュタイン博士ですら暗記が苦手だったといわれていますし、逆に(実在の人物ではありませんが)のび太君ですらあやとりや射撃といった知る人ぞ知る特技があります。
もしあなたが「自分には何も出来ない」と感じていたとしても、それは自身がまだ気づいていないだけで、あなたが出来ることや得意なことは必ずあります。出来ることや得意なことを実感する機会がなかっただけなのです。例え出来ないことや苦手なことがあったとしても、それがあなたの個性でありそれが本来の自分の姿なのですから、まずはそのありのままの自分を受け入れ、本来の自分を認めてあげることが自己肯定感を高める上で大切な第一歩といえるでしょう。
2.否定的な感情のベクトルを変える
自分に対する否定的な感情をマイナス方向に向かう感情のベクトル(マイナスのベクトル)、自分に対する肯定的な感情をプラス方向に向かう感情のベクトル(プラスのベクトル)だと考えてみましょう。
自分に対する感情がマイナスのベクトルを向いていると、いくら自己肯定感を高めようと思ってもプラスのベクトルに向かう力は高まりません。先ほどの項では、出来ないことや苦手なことがあったとしてもそれをありのままの自分として認めてあげることが大切だと説明しましたが、それは「出来ないことや苦手なこと」に対するマイナスのベクトルをストップさせ、「ありのままのの自分」をゼロとして基準に設定するということになります。
しかしそれではまだマイナスにならないだけであって自分に対する感情がプラスになるわけではありません。そこで自分に対する感情をプラスの方向にベクトルの向きを変えることが重要になってきます。
「逆上がりができない」ということを例に考えてみましょう。
逆上がりができない自分はダメなんだ(マイナスのベクトル)
できないことに関してそんな自分をダメだと思ってしまうと自分に対する感情がマイナスのベクトルを向いている状態になってしまいます。
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逆上がりができないけどそれが今の自分なので受け入れよう(ゼロの状態)
できなくてもそれがありのままの今の自分なのだと考えることによって、マイナス方向に向かうベクトルをストップさせ今の自分をゼロ基準として設定することができるようになります。
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今は逆上がりができないけどできるようになりたいと思う(プラスのベクトル)
できないことをできるようになりたいと思うことによって、まだゼロの状態ではありつつもマイナスのベクトルをプラス方向へ向きを変えることになります。
いかがでしょうか?
例え今の自分には逆上がりができなかったとしても、「できるようになりたい」と思うことによって、そう思っている自分を否定する理由はなくなりますし、逆に肯定的に捉えることができるようになるのではないでしょうか。何かができないことに対して自分を否定的に捉えてしまう場合は考え方を上記のように変えていくことで、自分に対する感情のベクトルの向きをマイナスからプラス方向へと変えることができるのです。
3.自分を大切にする
ここまでは自分をゼロの状態からプラス方向に感情のベクトルを変えることの必要性について説明してきましたが、自己肯定感を高めるためにはここからさらにプラス方向へと向かう感情の力を高めていくことが重要になります。
必要なことは「自分を大切にする」ということです。それは自分の気持ちに正直に向き合い、自分に嘘をついたり騙したりしないことです。
自分の気持ちを本当に理解できるのは自分自身以外にはいません。自分の真の理解者である自分自身に対し嘘をつくことは、自分を蔑ろにする行為に他なりません。自分は本当はどうしたいのか?自分は何が嫌だと感じているのか?自分自身と真摯に向き合い、理解しようと努め、共感し、受け入れてあげてください。そして自分が心から望んでいるものを手に入れてあげようとしてください。例えそれを手に入れることが困難に思えたとしても簡単に諦めてしまわないことです。
望んでいるものが手に入らない状態は辛いことではありますが、その辛さを感じている自分が本来の自分の姿なのですから「辛い」と思っている自分を受け入れ、認めてあげるべきです。「仕方ないんだ」などと考え諦めてしまうことは辛さを感じている本来の自分を騙すことでもあり、「望んでいるものを手に入れたい」と思っている自分を見離すことにもなってしまいます。自分が望んでいるものを決して諦めず、手に入れてあげようという気持ちを持ち続けること。それが自分を大切にするということなのです。
自分を大切にすることは自分を尊重するということでもあります。自分を尊重することができるようなって初めて他人を尊重することができます。それは自分を尊重するその同じやり方でもって他人=自分が大切だと思える相手と接すればよいのです。そして自分と他人を尊重することができるようになれば、周囲との関わり合いの中で自分自身の在り方も肯定的に感じることができるようになるでしょう。
まとめ
このコラムでは自己肯定感についてとその高め方について解説してきましたが、自己肯定感を高めようと一口にいってもそんなに簡単なことではないかと思います。一朝一夕に達せられるものでもなく、それなりに時間がかかるかもしれません。どうしても自分に対して否定的に考えてしまう時もあるでしょうし、心が折れそうになることもあるでしょう。そんな場合でも、そのありのままの自分を受け入れ、自分を大切にすることを続けていくことでやがて自分自身を肯定することもできるようになるはずです。
あなたは世界にたった一人の存在で、誰もあなたの代わりになることはできません。あなたはあなたであることによって既に世界から肯定されているのです。そのことを心に留めておいていただければと思います。